ベッドでも革靴を履いて寝る
自分の部屋は一人部屋であったので、入寮してから約2ヶ月余りは寝るときも革靴は脱いではいけないものと言う感覚で いたのですが、ある朝、隣の部屋のアメリカの寮生が何かの用事でドアーをノックしたので、ベッドから飛び起きドアーを開けた途端、 「Oh! My God. You have slept your shoes on?」とびっくりしたような顔つきで言ったものですから 「Why Not!」と言い換えしました。 靴なんて履いて寝ているやつはお前だけだよ!と言っていたような気がします。 (未だ相手の言っている英語がはっきり判らなかったのでぽかんとしていたのだと思います)
その後、彼は日本では靴を履いてベッドで寝るのか、、と言う質問が返って来てはっと我に返ったことを覚えています。 あの当時はアメリカでの実生活について書かれた本は殆どなく、何かの本で読んだ 「アメリカ人は家の中へ入るときは靴を脱がない」と言う印象が自分をしてそのような先入観となっていたのです。
全く愚かな話ですが、、、それに、もう一つあります。当時は田舎の教師でしたから水洗便所があるという知識がなく、 アメリカに行って始めて便所は水洗で用をたすことが常識であることを知りました。 しかし、始めての寮生活ではシヤワーそのものが始めての体験であり、その隣に男子用の水洗便所があることすら知るよしもなく、 シャワーを浴びた後きれいな水が流れている洗面台のようなところで石けんで手ぬぐいを洗っていました。 その後すぐにある学生がそこで用をたすのを目前にして、それが洗面台でないこと知り、 言いようのない困惑感を味わいました。
いきなり異国の環境に入ることはそれなりの心構えと覚悟が必要であったと思いますが、見るもの、聞くもの、 すべてが360度違う所に限られた情報しか持たない田舎生まれの日本人が、留学することになったのです。 当然色々な困難や理解に苦しむ事柄が待ち受けていたのです。。 当時は想像の域でしかなかった外国の知識、しかし現実に直面したその格差は あまりにも大きく、かつ不安の幕開けでもありました。